山本住職のシルクロード体験記
第4章 (第3部)
敦煌莫高窟 Mogao Caves
(現地2005年6月7日)

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甘粛省敦煌(トンコウ)DUNHUANG
莫高窟 Mogao Caves
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  ご案内のように、当初の石窟造営当時は、座禅を行う龕(ガン)をその修行僧自身が堀ったようですが、歴史が進むにしたがい、現在南区で見ることができます色彩豊かな石窟となって行きます。その多くは、時の権力者や篤信者によって造営費が寄進され造られました。主に礼拝や座禅をする「お堂」でした。現在、この南区の石窟数は492窟です。
  北区に関しては、僧侶の宿坊・居住空間として窟が造られておりますので、現在までの研究により、カマド、厳寒対策のオンドル、寝間や小さな座禅よう空間が設備されている窟が発見されております。住居空間なので、壁画や塑像類は見つかっておりません。
  敦煌石窟の絵師たちもこの北区に住み込んでいたことが判明しております。

第332窟

  今回、縁あって初めて見ることができたのが第332窟。

  この窟の造営は、初唐(西暦618年頃−700年)であり中の色彩が美しくとても豊かです。それまでのものと比べて、窟の形に変化が見られます。

  中心柱が天井を支えている造りはインド様式。手前には緩やかな屋根のような切妻造りで、それは漢民族の伝統的部屋造り様式です。この塔廟窟造りは北朝以来に流行したとのことですが、唐の代では極めて珍しい存在です。

  正面柱のと手前(東)側に、色彩豊かな大型の仏三尊が安置されています。

  この窟のもう一つの特徴は、中心柱の後ろに涅槃像が描かれているところです。この図は世界で一番大きく、場面の数が多い涅槃経変です。インドでもこれ程細かくきちんとした涅槃経変は存在しません。棺桶に収められている釈尊の足だけが見える場面もあります。棺桶は中国様式です。金剛力士がその棺桶を担いでいる葬列の場面や、また荼毘に付した後、お弟子方が自分らの国へ舎利を持って帰り、仏舎利塔を建てるの場面なども細かく描写されています。

  1300年前、この絵を描写した絵師は経典を読んで理解した上で、涅槃仏と涅槃経変を合わせてこの石窟の主題「涅槃の世界」を表したのです。この洞の寄進者も涅槃経に深い信仰心を持っておられたことが判ります。
  インドでは、涅槃を描きませんでしたが、涅槃図は西暦3世紀以降増えました。各場面をこれほど大きく描いたものはありません。

  天井は全部千仏です。

  この窟は観仏の為のお堂であるので、一回りすることで誕生、成仏、涅槃を観ることができます。

  鉱物顔料が使われ、日光にさらされていなかったこともあり色は鮮やかに残っております。

  造営当時のこの石窟の前室は現状よりかなり前方までありましたが、清(しん)時代に一度火事があったことが判っているので、その際小さくなってしましました。

  なお、窟内には維摩経変もあり、維摩が文殊菩薩に話をしているのが見られます。

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